韓国大法院は、特許侵害訴訟の第1審において、被告が自らの実施製品について原告の特許発明の構成要件をすべて備えている旨の陳述を行った場合、「裁判上の自認」に該当し、当該自認が適法に取り消されない限り、法院はこれに拘束されるとの判決を下した(大法院2026.7.16.宣告2026Da202753判決)。
▶ 事件の背景
本件特許発明は、「二次電池用極板スタッキング装置」に関するものである。特許権者である原告は、被告が生産・販売した二次電池用装置が自己の特許権を侵害すると主張し、特許権侵害差止めを求める訴訟を提起した。
第1審法院(ソウル中央地方法院)は、本件特許発明について、先行技術により進歩性が否定されるため無効理由が存在し、無効理由のある特許権に基づいて侵害差止めを求める原告の請求は権利濫用に該当すると判断し、原告敗訴の判決を下した。第1審において、被告は、自らの実施製品が本件特許発明と同一であることを争わない旨の陳述を行った。
▶ 特許法院の判決
特許法院は、第1審判決とは異なり、本件特許発明の進歩性が否定されないと判断した。これにより、被告の進歩性欠如に基づく権利濫用の抗弁も認めなかった。
一方、被告は、第1審で行った陳述は「法律上の判断又は評価」に関するものであり、裁判上の自認の対象とはならず、仮に裁判上の自認に該当するとしても、当該陳述は真実に反し、錯誤に基づいてなされたものであるため、取り消すことができると主張した。
これに対し特許法院は、第1審における前記陳述が、被告の実施製品の各対応構成が特許発明の構成要件と同一又は均等であるという「法律上の判断又は評価」に関するものであるか否かについては、当事者による具体的な陳述内容、その陳述に至った経緯及び弁論の進行状況等を総合的に考慮して判断すべきであり、被告の前記陳述は、被告の実施製品が本件特許発明の構成要件をすべて備えているという「事実」に関する陳述であると判断し、裁判上の自認の成立を認定した。
また、特許法院は、裁判上の自認を取り消すためには、当該自認が真実に反すること及び錯誤に基づいてなされたものであることの双方を証明しなければならないとしたうえで、被告が提出した証拠や事情のみでは、取消要件を満たす事実が証明されたとは認め難いと判断した。
したがって、特許法院は、被告の実施製品は本件特許発明の構成要件をすべて備えているといえるため、その権利範囲に属すると判示した。
▶ 大法院の判決
大法院は、特許法院による被告の「裁判上の自認」に関する判断を維持した。
大法院は、特許侵害訴訟において、相手方が製造する製品がどのような構成要件を備えているかは、特許侵害の有無を判断するための前提となる主要事実であって、裁判上の自認の対象となり得るものであり、いったん裁判上の自認が成立した場合、当該自認が適法に取り消されない限り、法院はこれに拘束されるとの従来の法理を改めて確認した。
これを踏まえ、大法院は、第1審における被告の陳述について裁判上の自認が成立し、かつ、当該自認が適法に取り消されたとは認められない旨の原審の判断に誤りはないと結論付けた。