韓国特許法院は、拒絶決定不服審判において、特許審判院が審査官の拒絶決定で引用されたものと同じ先行発明に基づいて審判請求を棄却したとしても、その先行発明に対する解釈が審査官の解釈と異なる場合、かかる異なる解釈は新たな拒絶理由に該当すると判示した。よって、特許法院は、このような新たな拒絶理由に対して出願人に意見書及び補正書を提出する機会を与えることなく審判請求を棄却した審決には、手続上の違法があると判断した(特許法院2026.2.12.宣告2025Heo 10293判決、確定)。
▶ 事件の背景
本件特許出願は、視覚効果を有する多層コーティングに関するものであって、前記多層コーティングは主要構成要件として視覚効果層及び色彩層を含んでいる。
審査の段階において、審査官は、出願発明の視覚効果層及び色彩層に対応する構成として中間層及び白層を含む多層コーティングを開示する日本公開特許公報を先行発明として引用し、進歩性欠如を理由に拒絶決定を下した。
これに対し、韓国特許審判院は、拒絶決定不服審判において、同じ先行発明による進歩性欠如を理由に原告の審判請求を棄却したが、具体的には、先行発明の中間層及び白層ではなく、インク組成物層及び中間層がそれぞれ出願発明の視覚効果層及び色彩層に対応すると判断した。これを不服とし、出願人は特許法院に審決取消訴訟を提起した。
▶ 関連法理及び事件の争点
特許法上、審査段階で新たな拒絶理由が発見された場合には、出願人に拒絶理由を通知し、意見提出の機会を与えなければならず、かかる規定は特許審判院の拒絶決定不服審判手続にも準用される(特許法第63条第1項及び第170条)。
本件では、特許審判院が審査段階で引用されたものと同じ先行発明を引用したものの、その先行発明を実質的に異なって解釈した結果、出願発明との構成要件の対応関係を異なって認定した場合、新たな拒絶理由が生じたものと認められるか否かが争点となった。
▶ 特許法院の判断
特許法院は審決を取消して事件を差し戻すとともに、「新たな拒絶理由」に関する判断基準を次のように示した。すなわち、特許法院は、審判段階において請求項の構成要件と先行発明の開示内容との対応関係が審査段階とは異なって判断されたという事情だけで、直ちに新たな拒絶理由に該当すると断定することはできないとした。
しかし、法院は、そのような構成要件の対応関係の変更によって出願発明と先行発明との相違点に関する判断内容が変わり、出願人の対応論理及び補正の方向に重要な相違をもたらす場合であれば、拒絶決定理由と主たる趣旨が合致しない新たな拒絶理由に該当すると判示した。
本件において、特許法院は、審決のように出願発明の「視覚効果層」及び「色彩層」に関する対応関係を異にする進歩性欠如の拒絶理由が示されたのであれば、出願人は審査過程とは異なる補正及び対応戦略をとっていた可能性があると見なした。その結果、法院は、本審決が意見提出の機会を与えることなく、審査段階での拒絶理由とは異なる新たな理由に基づいて原告の審判請求を棄却した手続上の違法があると判断した。