2020 年 3 月 11 日より施行する改正特許法によると「方法の使用を申し出る行為」が方法の発明における実施の一態様になった。それにより、特許権の対象になるソフトウェアを許諾なしにオンラインで転送する行為に対して訴を提起することが可能となった。
▶ 法改正の背景
ソフトウェアは一連の指示・命令からなるものであって、特許法上では方法の発明として保護される。しかし、かつて韓国特許法では、方法の発明の場合、物の発明とは異なって、「その方法を使用する行為」のみが実施態様として挙げられていたので、ソフトウェアを許諾なしに販売又は流通する行為を防止するための特許法上の保護には不十分であった。
このような問題点を改善すべく、韓国特許庁はコンピュータプログラム発明をプログラム記録媒体に係る請求項、データ記録媒体に係る請求項、若しくは媒体に格納されたコンピュータプログラムに係る請求項のように、「物の発明」として記載することを許容し、ソフトウェアに対しても物の発明に準じる保護を提供してきていた。
ところが、最近のソフトウェアをめぐる流通行為は、CD や USB のような格納媒体を通じた流通行為よりは、オンライン転送による配布行為が殆どを占めるため、格納媒体に係る請求項の保護を主とするかつて韓国特許庁の接近は実効性の乏しい対策であるとの批判があった。それゆえ、一つの補完策として、ソフトウェア発明に係る実施行為の態様には、ソフトウェアをオンラインで転送する行為まで含むことと解すべきであるとの声もあったものの、実際の運用までは至らなかったので、より積極的な保護のため法改正の必要性を踏まえ、様々な議論が進むようになった。
とはいえ、全ての人がソフトウェアの特許法上の保護拡大に賛成したわけではない。ソフトウェア開発者らの中では、保護範囲の拡大に連れ特許権侵害の恐れも拡大するので、開発者らはオンライン上でソースコードを積極的に公開又は共有することを躊躇するようになり、これは結局ソフトウェア産業の革新や発展を阻害することに繋がるはずと述べながら、ソフトウェアをオンライン上で転送する行為にまで保護の対象とすることについて懸念を表した。
▶ 特許法の改正内容
改正特許法では、方法の発明の実施範囲が拡大され、方法の使用を申し出る行為も方法の発明の侵害を構成する実施行為に該当することを明らかにした。具体的には、韓国特許法第2条第3号で定義する「実施」の一類型として「ロ.方法の発明である場合:その方法を使用する行為又はその方法の使用を申し出る行為」が含まれるように改正された。
また、ソフトウェア保護範囲の拡大に関する法改正によりソフトウェアを巡る開発活動がむしろ妨げられるおそれがあるとの業界の懸念を鑑み、特許権の効力が及ぶ範囲を故意がある場合にのみ制限した。
第 94 条(特許権の効力) ②特許発明の実施が第 2 条第 3 号ロ目による方法の使用を申し出る行為である場合、特許権の効力は、その方法の使用が特許権又は専用実施権を侵害することを知りながらその方法の使用を申し出る行為にのみ及ぶ。
▶ 今後の展望
改正特許法により、ソフトウェア特許の保護範囲内に属するソフトウェアをオンライン上で転送する行為は方法の特許の侵害にあたることが明らかになった。これにより、特許権を行使できる範囲が拡大され、ソフトウェア発明を保護するためのソフトウェア関連技術の特許出願が増加すると見込まれる。
一方、特許権の保護対象になるソフトウェアをオンラインで転送する行為について特許権を行使するためには、改正法にて新たに導入された「故意」の要件を満たさなければならないので、ソフトウェア発明に係る特許権者は訴の提起に先立ち、相手に対して警告状を送るなどの措置をとることが望ましいだろう。