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事実審の手続終結後に確定した訂正審決は再審の理由にならない

  • March 31, 2020
  • 李桂榮弁理士

大法院は最近、特許無効訴訟の事実審(即ち、特許審判院及び特許法院での審理手続)が終結した後、当該特許の請求項に対する訂正を認める旨訂正審決が確定したとしても、それが訂正された請求項に基づいて特許無効訴訟の再審を求める根拠にはならない旨判決をした(韓国大法院 2020.01.22.宣告、2016Hu2522 全員合議体判決)。 



事件の背景 

 

本件特許に対してその有効性を争う者により、対象特許発明が先行技術に比べて進歩性を欠いていることを理由として特許無効審判が請求された。特許審判院は本件特許が有効であると判断し、審判請求人は審決の取り消しを求める審決取消訴訟を特許法院に提起した。 特許法院は本件特許の一部の請求項について進歩性を欠いていると判断し、特許審判院の審決を取り消す旨判決を下したが、特許権者はそれに不服して大法院に上告をした。また、上告の直後、特許審判院に本事件特許の請求項を訂正するために訂正審判を請求した。 大法院における上告審の係属中に、特許審判院は本件特許に係る請求項の訂正を認める旨審決を下し、この訂正審決は審決謄本が特許権者に送達されたときに確定した。 

 

ちなみに、韓国特許法によると、請求項の訂正を許容する特許審判院の審決は遡及効を有することから、当該特許は訂正された請求項について特許出願、特許決定及び特許権が設定登録されたものと見なす。 



 大法院における主要争点 

 

上告審において特許権者は、1 つ目の上告理由として関連した大法院の判決を引用しながら、訂正前の請求項に基づいて下された特許法院の特許無効判決は排斥されるべきであり、特許無効審判請求人の無効主張は遡及効を有する訂正された請求項に基づいて再び審理されるべき旨主張をした。 

2 つ目の上告理由として、特許権者は訂正前の請求項に記載された発明は依然として先行技術に対して進歩性を有する旨主張をしながら、特許法院の判決を破棄することを求めた。 



 関連した先行判例 

 

1つ目の上告理由に関連して、特許権者の再審請求を支持する一連の先行判決が存在する(一例として、韓国大法院 2001.10.12.宣告、99Hu598 判決参照)。

 

しかし、前記先行判決に対しては、大法院に上告するまで特許権者が訂正審判の請求を先延ばすことを容認することになり、これは司法手続の悪用を助長し、かつ、第三者が特許有効性を争うことが困難になりかねないとの批判があった。 



 大法院の判断 

 

大法院は、訂正された請求項に基づいて再審を求める 1 つ目の上告理由の法的重要性及びその波及効果を勘案して全員合議体を召集し、全員合議体の判決で「特許審判院及び特許法院の事実審終結後に特許請求項の訂正を認める旨訂正審決が確定したとしても、訂正された請求項に基づいて特許無効訴訟の再審を求めることは再審の理由にならない」と述べながら、これと異なる趣旨の従前の判決を変更した。 

また、大法院は、本判決の適用範囲に関連して、本判決は特許侵害訴訟及び権利範囲確認審判にも同様に適用されることを明らかにした。 

なお、2 つ目の上告理由について、大法院は特許権者の主張を認め、訂正前の請求項は有効である旨判決をし、事件を下級審に差し戻した。 



 本判決が及ぼす影響 

 

本判決は、審判・訴訟手続きを利用して特許の有効性を争うことを過度に遅延又は挫折させようとする特許権者の戦略に歯止めを掛けることと評価される。 

 

 

本判決によると、特許権者による訂正審判は遅くとも、特許侵害訴訟、特許無効審判又は権利範囲確認審判において下された不利な判決に対する大法院への上告前に請求しなければならない。実際に、特許権者が特許の有効性を確保するために訂正審判の請求が必要であると判断した場合には、おそらく特許法院が訂正された請求項に基づいて判決を下すことができるよう、十分な期間を考えながらその審判請求の時期を急がれるのが望ましいだろう。