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旧不正競争防止法第2条第1号(ヌ)項目の成果物盗用による不正競争行為に関する韓国最高裁の判例

  • September 30, 2020
  • 李姃垣弁理士 / 宋炅燮弁理士

韓国最高裁は、2020年7月9日付で宣告した2017Da217847判決において、フランスのブランド「エルメス」の有名な製品である「ケリーバッグ」と「バーキンバッグ」に類似した形のハンドバッグを生産・販売した被告の行為は、旧不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律(以下、「旧不正競争防止法」という)の第2条第1号(メ)項目の不正競争行為に該当すると見なし、これとは異なって判断した高等裁判所の原審を破棄し、これを差し戻した。



▶ 事件の背景
 

 


左から原告の「ケリーバッグ」、「バーキンバッグ」、及び被告の「目玉バッグ」 

 


被告は、原告の「ケリーバッグ」及び「バーキンバッグ」に類似した形態を有するハンドバッグの正面に、被告が創作した図案()を取り付けた製品(別名、「目玉バッグ」)を生産及び販売した。

原告は自身の「ケリーバッグ」と「バーキンバッグ」のデザインの名声と周知・著名性を主張し、「ケリーバッグ」と「バーキンバッグ」の形と同一・類似した形態の製品を生産・販売する被告の行為は、旧不正競争防止法第2条第1号(ア)項目の「他品の商品と混同させる行為」、(ハ)項目の「著名商標の希釈化行為」、いわゆる「デッドコピー禁止条項」とも呼ばれる(メ)項目の「商品形態の模倣行為」又は不正競争行為に関する補充的一般条項である(メ)項目に該当するか、民法上の不法行為に該当すると主張した。



 下級審の判断


一審であるソウル中央地方裁判所は、旧不正競争防止法第2条第1号の(ア)項目と(ハ)項目に基づく原告の主張は排斥したものの、第2条第1号(メ)項目に関しては、原告の製品の形態が「相当な投資や努力によってつくられた成果」に該当し、これら製品の形態は公衆の領域に属するものではないため「法律上保護する価値がある利益」であり、原告の許可なしに原告の製品の形態を無断で使用する行為は、「公正な商取引の慣行や競争秩序に反すること」であるため、被告の行為は不正競争行為に該当すると判断した。


控訴審であるソウル高等裁判所は、一審判決を取消し、被告の行為が不正競争防止法に反するものでもなく、かつ民法上の不正行為に該当するものでもない旨の判決を下した。高等裁判所は、本事件が旧不正競争防止法第2条(ア)項目、(ハ)項目及び(メ)項目の要件は満たせず、例外的な場合に限って(メ)項目の一般的な補充条項を適用できるという点では下級審の判決を是認した。また、原告の「ケリーバッグ」及び「バーキンバッグ」が原告の相当な投資と努力によってつくられた成果に該当し、被告の商品と原告の商品の一部に類似性があることも認めた。

しかし、高等裁判所は、同法第2条第1号(メ)項目は一般条項であるので、この適用については慎重に検討すべきであり、同条項で指す「不正競争行為」とは、他人の成果の多くの部分をそのまま利用しながら、模倣者の創作的要素がほぼ加味されていない直接的な模倣に該当する場合をいうことを明らかにした。

被告の製品は、被告が創作した図案(、 )が前面の大部分に大きく取り付け目立つようにする方法で被告独自の創作的要素が加味したものであって、新しい美感と独創性を具現したものに該当し、結論として、被告の行為は不正競争行為に該当しないと判断しながら原告の請求をすべて棄却した。



▶ 
最高裁の判断
 


最高裁は、法第2条第1項(メ)項目は、「成果等」の類型に制限を設けていないため、従来の知的財産権法に基づいて保護を受けることが難しい形態の結果物も含まれ、このような「成果等」を判断する時は、このような結果物が得た名声や経済的価値、結果物に付随する顧客吸収力、当該事業分野で結果物が占める割合と経済力等を総合的に考慮するべきであり、このような成果等の無断使用を通じて侵害された経済的利益が公衆の領域に属するものであってはならないと判示し、「成果」に関する判断のガイドラインを提示した。


また、「公正な商取引の慣行や経済秩序に反する方法で自己の営業のために無断で使用した場合」に該当するためには、権利者と侵害者が経済関係又は近い将来に競争関係に置かれる可能性、権利者が主張する成果等が含まれた産業分野の商取引の慣行や経済秩序の内容とその内容の公正性、かかる成果等が侵害者の商品やサービスによって市場で代替される可能性、かかる成果等が需要者や取引者に知られている程度、需要者や取引者の混同の可能性等を総合的に考慮すべきであると述べ、法第2条第1項(メ)項目を適用するための判断基準を示した。最高裁は、前述の判断基準に基づいて本事件に対して以下のように判断した。

原告の製品と被告の製品とは、たとえ材質、価格及び主な顧客層等において差が存在するものの、被告の製品を後面と側面から観察した場合、図案が取り付けられておらず原告の製品との区別が容易ではなく、被告の製品が需要者から人気を得たことは、原告の製品に類似しているという特徴が相当寄与したものと見られ、被告の製品が販売される場合、原告の製品の希少性を維持するにあたって阻害要因になるおそれがあり、被告のコンセプトである「Fake for Fun」を見ても、原告の製品の周知性に便乗しようとする被告の意図も推断することができる。また、需要者に広く知られている他人の商品表示を使用するためには、契約等を通じて提携やコラボレーションすることが公正な商取引に符合するため、被告が原告の製品形態を無断で使用する行為は、同法第2条第1項(メ)項目の不正競争行為に該当すると判断し、これとは異なって判断した原審を破棄し差し戻した。



▶ 
結論


本最高裁判決と法第2条第1項(メ)項目の解釈に関する一連の最高裁判決によって、補充的一般条項に該当する本条項の適用基準が次第に具体化していることがわかる。今後、権利者自らの相当な投資や努力によってつくられた成果が他人によって無断で使用されたとき、権利者は法第2条第1項(メ)項目に基づき、より積極的に侵害に対する具体的な処置を取ることができると予想される。