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商標法及びデザイン保護法の改正-懲罰的損害賠償制度などで権利者保護強化

  • December 31, 2020
  • 李姃垣弁理士 / 宋炅燮弁理士

2020年10月20日より施行されている韓国商標法及びデザイン保護法は、権利者の保護を強化する趣旨で以下の3点について改正された。



▶ 懲罰的損害賠償制度の導入

 

商標権又はデザイン権を故意に侵害した場合、損害として認められた金額の3倍を越えない範囲内で賠償額を定めることができる。特許権を故意に侵害した者に対して最大3倍の増額賠償を可能にした2019年の特許法改正に引き続き、今年から商標法及びデザイン保護法でもこれを反映したものである。

 

これまで知的財産権の保護基盤を強化するため、他人の知的財産権を故意に侵害する行為に対し、懲罰的な損害賠償制度を導入しなければならないという必要性が高まっており、今回の改正商標法及びデザイン保護法によって特許権だけでなく、商標権又はデザイン権を故意に侵害した者に対しても裁判所は損害として認められた金額の3倍を越えない範囲内で賠償額を定めることができるようになった。

 

特に、改正法には意図的な侵害に対する賠償額を判断する際の考慮事項として、次の①~⑧が挙げられている。

 

①侵害行為により当該商標の識別力又は名声が損傷された程度(侵害行為をした者の優越的地位の有無)、②故意又は損害発生のおそれを認識した程度、③侵害行為により、権利者及び専用実施権者(専用使用権者)が被った被害規模、④侵害行為により、侵害した者が得た経済的利益、⑤侵害行為の期間・回数など、⑥侵害行為による罰金、⑦侵害行為をした者の財産状態、⑧侵害行為をした者の被害を減らそうとする被害救済の努力の程度



 損害額の推定規定の使用料の算定基準の変更

 

改正法では、損害額の推定規定の1つである実施権(使用権)の算定基準を「通常受けることができる金額」から「合理的に受けることができる金額」に用語を変更した。

 

裁判所は、殆どの侵害事件において、通常実施権(使用権)の実施料(使用料)に準じて「通常受けることができる金額」を判断したが、かかる金額は市場の基準よりも低く算定される傾向があり、そればかりか、「通常受けることができる金額」の判断に際して、参考にできる他の通常実施権の事例それ自体が存在しない場合もあった。そこで、今回の改正法では「合理的に」考慮することができる全ての要素を参酌して損害額を柔軟に算定することができるように補完した。



 法定損害賠償額の上限を引き上げ

 

かつて商標法は損害賠償額に関して、商標権者(又は専用使用権者)が登録商標を使用する場合これと同一又は同一性のある範囲内で故意や過失により侵害した者に対し、5千万ウォン以下の損害賠償額を請求することができると定めていた(旧商標法第111条)。しかし、今回の改正法では商標権侵害に係る損害賠償額の法定上限額を1億ウォン(故意の場合、最大3億ウォン)に引き上げた。

 

今回の改正商標法及びデザイン保護法により、今後商標権者やデザイン権者の保護により一層の充実を図ることができると見込まれる。