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行政法院、登載特許権の存続期間満了日に行われたジェネリック医薬品の卸売業者への出荷行為によるジェネリックの品目許可取消処分の適法判断を是認

  • September 30, 2021
  • 李賢實弁理士

医薬品許可-特許連携制度によると、新薬の品目許可を得た者は当該新薬に関する特許権(「登載特許権」)を食品医薬品安全処(「食薬処」)の医薬品特許目録に登載することができる。一方、新薬の安全性・有効性の資料に基づいて品目許可(「ジェネリック許可」)を申請する者は、当該新薬の品目許可を有する者及び登載特許権者に自分のジェネリック品目許可申請の事実を通知する必要がある。登載特許権者は前記通知を受け取った日から45日以内に特許権侵害差止訴訟等を提起しつつ、通知されたジェネリック医薬品の販売禁止を食薬処に申請することができる。


ただし、登載特許権の存続期間が満了となった後に、当該ジェネリック医薬品を販売することを条件にしてジェネリック品目許可を申請する場合は、登載特許権者への前記のような通知義務が免除される。前記条件に違反して登載特許権の存続期間が満了する前に当該ジェネリック医薬品を販売した場合は、旧薬事法(2018年12月11日法律第15891号として改正される前のもの)第76条第1項第5の3号(「本件の根拠規定」)に基づき、食薬処長がその品目許可を取り消すことができる。


最近、ソウル行政法院は、登載特許権が満了となる直前に医薬品を販売した事実が摘発され、食薬処から品目許可の取消処分が下された事案に対して、その許可取消は正当であるという判断を下した。登載特許権の存続期間の満了日当日とその前日にジェネリック医薬品の販売行為を行ったことは、登載特許権の満了前にジェネリック販売を行わないという品目許可の条件に違反したと判断したのである(ソウル行政法院 2021年7月8日宣告 2020Guhap69236)。

 

 

事件の背景

 

本件において、食薬処の医薬品特許目録に登載された新薬の登載特許権の存続期間満了日は2018年11月7日であった。原告は2018年8月29日付で当該新薬のジェネリック医薬品(「本件医薬品」)に関して、登載特許権の存続期間が満了となった後に販売することを条件にして品目許可を得た。ところが原告は、登載特許権が満了後即座に本件医薬品を販売できるようにすることを目的とし、2018年11月6日と7日に医薬品の卸売業者及び街の薬局に宅配業者を通じて本件医薬品を出荷した。その出荷量の合計は35箱であった。

 

登載特許権の存続期間満了前に、本件医薬品が卸売業者等に出荷された事実を確認した食薬処長は、2020年6月30日に本件医薬品に対する品目許可を2020年7月14日付で取消す処分を下した。



 法院の判断

 

原告は食薬処長の品目許可取消処分が不当だとしてその取消を求める訴訟を行政法院に提起し、特許権存続期間満了の前日又は当日に行われた本件医薬品の卸売業者への出荷行為は、本件の根拠規定で品目許可の取消事由として定めている「販売」ではなく「販売のための予備ないし準備行為」に過ぎないと主張した。かかる原告の行為は、特許権満了と同時にジェネリック医薬品の処方及び販売が可能となるよう、特許権満了の直前に医療機関や街の薬局にジェネリック医薬品を供給してきた業界の古くからの慣行によるものであった。

 

しかし、法院は次のような理由を挙げ、原告の行為が医薬品の販売のための予備又は準備行為ではなく、本件の根拠規定で処分対象としている販売行為自体に該当し、その取消処分は正当であると判断した。

 

まず、旧薬事法における複数の関連規定を総合してみると、旧薬事法では薬局からの消費者に対する小売行為と医薬品の製造業者の薬局や医薬品の卸売業者に対する販売行為すべてを「販売」と規定していると認められる。

 

医薬品の製造業者による医薬品販売は医薬品の注文、生産、引き渡し等の手続きを経て行われるが、本件医薬品の出荷時点で、このような一連の手続きがすべて履行された。

 

本件の根拠規定は、登載特許権を侵害する恐れのある販売行為に対して制裁を加えようとする目的で設けられものであり、本件の出荷行為自体は本件登載特許権の存続期間満了日の前日又は当日に行われたものの、販売行為をなす一連の注文、生産過程は満了日よりも前に行われた。したがって、本件登載特許権の存続期間中に本件医薬品の注文が行われたことで、登載特許権に基づく新薬に対する需要が減少し登載特許権者に損害が生じた可能性がある。そのため、本件の出荷行為を販売行為と見なし、これを規制する必要性は十分に認められる。

 

本件医薬品の販売量は比較的少ないと見られるものの、登載特許権に対する実際の侵害有無や、特許権侵害の程度に応じて処分の程度を異に決めなければならないと断定する根拠はない。



 判決の意義

 

原告の本件品目許可が取消となった頃、他の多数の医薬品についても、これと類似した品目許可取消処分が下されたことで業界全体に大きな衝撃をもたらした。登載特許権の満了後に販売することを条件とするジェネリック許可を得てから、その満了日前にジェネリック医薬品を販売したことによる食薬処の許可取消処分及びこれを支持した行政法院の判決は、特許権満了の直前に卸売業者に特許権を侵害する医薬品を供給することで特許満了時にジェネリック医薬品を即時販売できるようにしてきた従来のジェネリック業界の慣行に警鐘を鳴らすきっかけとなった。