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韓国特許法院、CICABIOの識別力を認定

  • June 30, 2022
  • 李姃垣弁理士 / 趙埈瑩弁理士

最近韓国特許法院は、国際登録第939039号「CICABIO」商標が化粧品関連商品において十分に識別力が認められるので、無効になってはならない旨判決を下した(特許法院2022.6.16.宣告2021Heo6245判決)。


 

事件の背景

 

NAOSは、韓国内外において「CICABIO」との商標を用いて多様なスキンケア製品を活発に販売しつつあるフランス化粧品会社であって、「CICABIO」はNAOSが第3類の「化粧品」に関わる商品を指定商品として2009年韓国で登録された商標である。一方、韓国某会社は登録商標「CICABIO」に対して、「CICABIO」は識別力のない文字を単に結合したものに過ぎないので識別力不足により無効になるべき旨主張をしつつ、2020年5月29日付で無効審判を請求した。

 

ちなみに 、 韓国某会社は無効審判の請求前に 、「CICABIOME」との商標を第3類の化粧品、ラベンダーオイル等を指定商品にして2019年4月16日付で商標出願をし、「CICABIOME」は2019年9月23日付で出願公告された。NAOSは、公告された商標「CICABIOME」が先登録商標「CICABIO」と特に呼称の面で極めて類似するので登録を受けることができない旨主張をしながら異議申し立てをした。これに対し、韓国某会社は、商標「CICABIO」が登録の際、商標として機能する程度まで十分な識別力を備えていなかったし、登録後には、「CICA」と「BIO」という文字が広く一般に使用されていたので、後発的に識別力を喪失したものと言わざるを得ないと主張しつつ、登録商標「CICABIO」に対する無効審判を請求した。無効審判において争点になったのは、「CICA」が化粧品関連商品において識別力が低いものであるかどうか、「CICABIO」が標章全体として十分に識別力を備えているかどうかであった。

 

なお、登録公告された商標 「CICABIOME」に対する異議申請手続は登録商標「CICABIO」に対する無効審判の手続が確定するまで中止された。

 

 

 

特許審判院の審決

 

無効審判手続において、審判請求人は「CICABIO」が識別力のない2つの文字「CICA」と「BIO」の単なる結合に過ぎないと主張し、この主張を裏付けるために「CICA」という文字は化粧品関連業界において傷を治癒し、皮膚鎮静の効果があると知られた「Centella Asiatica」(ツボクサ)又は「Cicatrix」( 傷 と い う 意 味 の ラ テ ン 語 ) の 略 語 と し て 広 く 知 ら れ て お り 、「BIO」という文字は化粧品関連業界において広く使用されるものであることを見せる多様な証拠を提示した。さらに、これら2つの文字の結合により新たな観念を形成しない「CICABIO」は識別力がないので無効にすべきことを主張した。

 

それに対して、被請求人は商標の識別力は標章全体として判断しなければならず、「CICABIO」は韓国の一般の需要者に「CICA」と「BIO」の分離した2つの文字の結合として認識される可能性は極めて低いと主張した。また、「CICABIO」から「CICA」を分離しても「CICA」は原材料や効能表示そのものを称するとは言えず、業界での使用状態を考慮しても、「Centella Asiatica(ツボクサ)」の略語として直感できないと争った。

 

特許審判院は、一応「CICABIO」が「CICA」と「BIO」に分離して認識されないことを前提した上で、「CICABIO」との全体標章が化粧品の成分又は原材料を意味することを裏付ける証拠がないので、たとえ「CICA」と「BIO」の各々が関連商品に対して広く使用されていたとはいえ、「CICABIO」全体が化粧品の性質を暗示又は強調することを超えて一般の需要者が直感できるものと見受けられないところ、「CICABIO」は原始的に、かつ後発的に識別力を喪失した商標に該当しないと判断し、審判請求を棄却する旨審決を下した。

 

 

 

特許法院の判決

 

特許法院での審決取消訴訟手続において原告は 、「CICA」と「BIO」の各々が識別力のない点を認めながらも、結合により新たな識別力を形成するかについては判断しないまま、単に「CICABIO」全体が化粧品の性質表示として使用された事例がないとの理由で識別力を認めることは結合商標の識別力判断の法理を誤解した誤りがあると主張した。

 

一方、被告は、「CICABIO」は同一の書体、大きさ、太さで構成された一つの文字であり、「CICA」と「BIO」との二つの文字が結合した商標とは認識されず、「CICA」は特定の単一の意味や語源として使用されていないので、当然商品の原材料、効能等を表すものとして使用されていないところ、識別力が認められるべきと反論した。また、「CICABIO」が「ツボクサを原材料とするバイオ化粧品」のような記述的意味として認識されるためには、多様な段階の推論と深思熟考の過程を経なければならないところ、「CICABIO」から記述的意味が直感されるとはいえないと主張した。さらに、「CICABIO」全体標章はもっぱらNAOSの識別標識としてのみ活発に使用されているだけであって、化粧品関連業界において何人もそれを記述的な標章として使用したことがないので、韓国の一般需要者が「CICABIO」を記述的標章として認識する可能性は極めて低いことを強調した。

 

特許法院は被告の全ての主張を受け入れ、「CICABIO」は登録当時に識別力が認められるものに該当することはもちろん、登録後にも識別力を喪失したものと見受けられないことを再度確認しながら原審決を維持した。

 

(第一特許法人(有)は「CICABIO」に関する無効紛争事件で商標権者たるNAOSを代理した。)