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特許審判に関する制度の改正

  • September 29, 2023
  • 閔智秀弁理士 / 李源祥弁理士

韓国特許審判院の審判事務取扱規定が改正され、2023年7月1日から施行された。主な改正の内容は、特許審判の審決日予告制の導入、当事者系事件に対する口頭審理の原則的開催の明文化、口頭審理の期日変更基準の具体化、迅速・優先審判制度の見直しである。審決日予告制の導入は、施行日以降に審決が予定されている事件から適用され、その他の改正は施行日以降に審判請求される事件から適用される。

 

 

▶ 特許審判の審決日予告制の導入 

 

特許法第162条によると、審判長は、特許審判の事件が審決をする程度に熟したときは、審理の終結を当事者に通知しなければならず、審決は、審理終結の通知をした日から20日以内にしなければならない。 

 

従来は、審理終結通知書に審理終結事実のみが通知されたので、審判結果が知りたい審判当事者は、審理終結通知を受け取った後、審決が出たか否かを引き続き確認しなければならないという不便があった。 

 

このような不便を解消すべく、当事者に審理終結通知をする際に審決予定日も一緒に案内するように審判手続が改正された。また、審決予定日が変更される場合は、審決予定日変更案内通知書が発せられる。

 

 

 当事者系事件に対する口頭審理の原則的開催の明文化 

 

従来は、当事者系事件に対して口頭審理の開催可否を当事者の申請又は審判長の職権で審判部が決定するようにしていたため、口頭審理の開催可否が不明確であった。改正された審判事務取扱規定では、当事者系事件に対する口頭審理の原則的開催を明確にし、口頭審理を開催しない例外事項を以下のように限定した。 

 

(i) 審判請求書の謄本送達後に答弁書が提出されない事件 

(ii) 口頭審理期日前に審判請求の取下げ又は却下等の理由で審理終結が予定された事件 

(iii) 当事者が提出した書類のみで事実認定及び判断が容易であると認められた事件

 

 

 口頭審理の期日変更基準の具体化 

 

従来は、決定された口頭審理の期日変更の申請理由に制限がなく、期日変更が頻繁に発生した。このような問題を解消すべく、両当事者の合意があるか他の法院期日と競合する場合のように、顕著な理由がある場合に限り口頭審理の期日変更を許容するように審判手続が改正された。 

 

 

 迅速・優先審判制度の見直し 

 

従来は、迅速・優先審判の対象が複数の規定に散在し、比較的に緊急性の低い事件まで迅速・優先審判の対象に含まれていたため一般審判の処理期間が遅れる問題が生じた。今回の改正を通じて、類似している迅速・優先審判の対象が統合され、緊急性の低い事件は迅速・優先審判の対象から除外された。 

 

 

 優先審判 

 

改正された審判事務取扱規定による優先審判の対象は、以下の通りである((i)~(v)の場合、審判長の職権で優先審判を認めることができ、(vi)~(xvii)の場合、当事者が優先審判を申請することができる)。 

 

(i) 補正却下決定に対する審判事件 

(ii) 審決取消訴訟で取り消された事件 

(iii) 審査官が無効審判を請求した事件 

(iv) 拒絶決定不服審判で取消審決された後、再び請求された拒絶決定不服審判事件 

(v) 半導体など先端技術関連優先審査出願に対する拒絶決定不服審判 

(vi) 発明(考案)の名称のみを訂正する訂正審判 

(vii) 国民経済上緊急な処理が必要な事件、及び軍需品など戦争遂行に必要な審判 

(viii) 薬事法に基づいて特許目録に登載された特許権に対する審判 

(ix) 特許分類がA61K(医療用製剤)又はC07K(ペプチド)に該当する出願に対する拒絶決定不服審判(出願日から3年6ヵ月又は審査請求日から2年6ヵ月を経過した場合) 

(x) 「素材・部品・装備産業の競争力強化のための特別措置法」による選定又は確認を受けた企業の権利範囲確認審判又は無効審判 

(xi) 特許・実用新案・デザイン・商標の一括審査された出願に対する拒絶決定不服審判 

(xii) 第四次産業革命関連新特許分類を付与した特許・実用新案登録出願に対する無効審判又は権利範囲確認審判 

(xiii) 「中小企業創業支援法」又は「1人創造企業育成に関する法律」による政府支援事業の受益企業の審判 

(xiv) 無権利者の特許に対する無効審判 

(xv) 中小企業と大企業間の当事者系審判 

(xvi) 規制のサンドボックス政策に係る審判 

(xvii) 審判長が産業財産権紛争調停委員会に回付した後、調停が決裂した事件

 

 

 迅速審判 

 

改正された審判事務取扱規定によると、以下の審判事件の場合、当事者は迅速審判を申請することができる。 

 

(i) 法院に係属中の訴訟事件、貿易委員会が通報した不公正貿易行為調査事件、警察・検察に立件されて捜査中の事件に係る審判、及び権利者から警告状などを受けた当事者が請求した権利範囲確認審判、無効審判、取消審判 

(ii) 無効審判の審決取消訴訟が係属中の訂正審判