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特許法の改正による特許権の存続期間延長登録の制限

  • March 31, 2025
  • 孫世靖弁理士 / 金旻志弁護士

韓国特許法が2025年1月21日をもって改正され、2025年7月22日から施行される予定である。主な改正内容は、(1)特許権の存続期間延長登録の延長期間及び延長可能な特許権の数の制限、(2)特許発明の実施行為に輸出を追加、及び(3)国防上必要な発明に対する秘密取扱命令の違反時の処罰規定の導入である。以下、各項目について順番に検討する。



▶ 医薬品特許権の存続期間延長登録の延長期間及び延長可能な特許権の数の制限  

 

特許法第89条によれば、特許発明を実施するために許可を受けなければならない医薬品発明の場合、その許可のために必要な有効性・安全性などの試験により特許発明を実施することができなかった期間に対して、最大5年まで存続期間が延長されることができる。 

ところが、米国、欧州などとは異なり、韓国の存続期間延長登録制度には、延長期間に関して許可時点から適用される別途の制限がなかった。また、一つの許可に基づいて延長可能な特許権の数にも制限がなく、関連する全ての特許権の存続期間が延長されることができた。その結果、一部の医薬品は、他の国よりも韓国で特許権の存続期間が長く延長され、ジェネリック医薬品の発売が遅れていた。 

このような状況を踏まえ、改正特許法では、存続期間延長登録により延長される特許権の存続期間が医薬品の許可日から14年を超えないようにし、一つの医薬品の許可に基づいて延長可能な特許権の数を一つに制限した。また、改正特許法では、出願審査が遅れて登録遅延による存続期間延長登録がある場合、それによって延長された日を起算して医薬品の許可による存続期間延長が可能であると規定し、二つの延長登録制度が別々に適用されることを明らかにした。 

これらの規定に違反すると、延長登録出願の拒絶理由及び延長登録の無効事由となる。ただし、許可を受けた日から14年を超過して延長登録された場合には、超過期間に限り無効となる。 


本改正法は、施行日である2025年7月22日以降の医薬品許可に基づく特許権の存続期間延長登録出願から適用される。 

 


▶ 特許発明の実施行為に輸出を追加   

 

現行特許法第2条第3号では、物の発明について、その生産、使用、譲渡、貸与、輸入若しくは譲渡又は貸与の申出(譲渡又は貸与のための展示を含む)をする行為を実施行為として規定している。 

このように、特許発明の実施行為には輸入が含まれていたものの、輸出は含まれていなかった。そのため、特許侵害製品が輸出された場合、関税法や不公正貿易行為の調査及び産業被害救済に関する法律などによって税関で阻止したり、課徴金を課すことはできたが、特許法に基づく損害賠償請求や侵害罪の主張は困難であった。

改正特許法によると、特許発明の実施行為に輸出が追加され、特許権者の保護範囲が拡大される。 



▶ 国防上必要な発明に対する秘密取扱命令の違反時の制裁規定の導入  

 

現行特許法第41条では、国防上必要な場合、外国に特許出願することを禁止したり、発明を秘密として取り扱うようにしている。しかし、前記秘密取扱命令などに違反した場合の罰則規定が別途存在しなかったため、その実効性を確保することが困難であった。 
 
改正特許法では、国防に関連する特許技術の流出を防止するため、秘密取扱命令などに違反した場合、5年以下の懲役又は5千万ウォン以下の罰金に処されることとなった。また、秘密取扱命令などに違反した者と共に、これに対して管理監督の義務がある法人又は代表者に対しても1億ウォン以下の罰金に処する両罰規定が新設された。 

 


▶ 改正の影響 


改正特許法により、国防及び経済に直結する特許権の保護がより強化される一方、医薬品特許権の場合には存続期間が短縮され、ジェネリック医薬品の早期市場進入が許容される。特に、一つの許可に対して一つの特許のみ延長可能となるため、今後は複数の特許のうち、どの特許に対して延長登録出願を行うか、慎重に評価し選択することが重要となる。考慮すべき要件としては、特許の種類(物質特許、用途特許、製剤特許など)、各特許について算定された当初の存続期間の満了日及び延長期間、特許の有効性、回避設計の容易性などがある。