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実質的に同一の医薬用途も存続期間が延長された特許権の効力範囲に含まれると判断

  • June 30, 2025
  • 曺炯恩弁理士

韓国特許法院は、存続期間が延長された特許権の効力範囲を判断するにあたり、確認対象発明の治療効果及び用途が薬事法上、最初に許可された効能·効果と同一である必要はなく、特許発明の明細書等を参酌して特許発明の治療効果及び医薬用途と実質的に同一か否かを中心に判断すべきであるという判決を下した(特許法院2025.1.23.宣告2024Heo13541判決)。本件は大法院に上告されたが、審理不続行で棄却され、判決が確定した(大法院2025.5.15.宣告2025Hu10142判決)。 

 

 

 

▶ 存続期間が延長された特許権の効力 

 

 

特許法第95条によると、存続期間が延長された特許権の効力は、その延長登録の理由となった許可等の対象物についての当該特許発明の実施行為にのみ及ぶ。ただし、その許可等において、物について特定の用途が定められている場合には、当該用途に用いられる物に特許権の効力が及ぶ。 


一方、存続期間が延長された特許発明の権利範囲に確認対象発明が属するかは有効成分の同一性の他にも、その治療効果と用途が同一であるか否かにかかっている。これを巡り、前記「用途」を薬事法上、最初に許可された適応症のみに限定すべきかについての議論があった。




▶ 事件の背景


本件の特許権者は、胃食道逆流症の治療に用いるためのクロマン置換されたベンゾイミダゾール誘導体に関する医薬発明について特許を受け、専用実施権者は、びらん性胃食道逆流症(以下、「①の適応症」)及び非びらん性胃食道逆流症(以下、「②の適応症」)を適応症とする医薬品について品目許可を得た。また、この許可を得るために要した時間について、本件特許の存続期間の延長登録が認められた。その後、専用実施権者は、消化性潰瘍及び/または慢性萎縮性胃炎患者におけるヘリコバクター・ピロリ除菌のための抗生剤併用療法(以下、「③の適応症」)について効能·効果を追加する変更許可を受けた。 


これに対し、韓国のジェネリック社は、同一の有効成分を含む③の適応症用の薬学組成物を確認対象発明として消極的権利範囲確認審判を請求しながら、確認対象発明は存続期間が延長された本件特許の保護範囲に属さないと主張した。 

特許審判院は、最初に品目許可を得た①及び②の適応症と、追加で品目許可を得た③の適応症はすべて「胃酸分泌を抑制して治療される酸関連の疾患」であって、治療効果及び用途が同一であるとの理由で棄却審決を下した。これに不服してジェネリック社は特許法院に控訴した。  

 


▶ 特許法院の判決


特許法院は、延長された特許権の効力範囲を判断するための基準としての特許法上の「用途」には、最初に品目許可を得た適応症だけでなく、それと実質的に同一の疾患の予防または治療に使用される医薬品の適応症までのすべてが含まれると見なすのが妥当であると認定した。 

特に特許法院は、「用途」の同一性可否は、明細書の記載等を通じて把握した特許発明の技術的意義や技術思想の核心、作用機序の同一性可否、適用対象の器官や組織等の具体的な適用部位、対象病症、処方等の使用状況等を総合的に考慮して判断すべきであると述べながら、本件特許の明細書の記載に鑑みれば、本件特許は①、②、③の適応症を含む多数の「胃酸分泌を抑制することで治療される酸関連疾患」を治療するための化合物を提供することを技術的特徴とすると判断した。 

これに基づいて、特許法院は、許可対象物の「用途」には最初に品目許可を得た ①及び②の適応症の他にも、追加で品目許可を得た③の適応症も含まれると認め、確認対象発明は存続期間が延長された本件特許の権利範囲に属するという結論に至った。