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不正競争行為に対し特許庁長が直接制裁できるようにする改正された不正競争防止法の施行

  • September 30, 2024
  • 張奎哲弁理士

2024年8月21日から、改正された不正競争防止および営業秘密保護に関する法律(以下、「不正競争防止法」)が施行され、特許庁長に違反行為者に対する是正命令を直接下すことができる権限が付与された。

 

 

改正された不正競争防止法第8条により、事業提案、入札、公募参加など技術取引過程でのアイデア奪取行為や、有名人の氏名、肖像などを無断使用するパブリシティー権の侵害など、不正競争行為の問題を直接解決できる権限が特許庁長に付与された。特許庁長は、違反行為をした者に30日以内の期間を定めて違反行為の中止、標識等の除去や修正、今後の再発防止、その他是正に必要な事項を勧告し、又は是正を命ずることができる。また、特許庁長は、違反行為者が是正勧告や是正命令に従わなかった場合は、その違反行為の内容及び是正勧告や是正命令の事実などを公表することができる。



従来は、特許庁は不正競争行為に対する行政調査を行い、違反事項が確認されれば是正勧告を下すことができた。しかし、このような是正勧告は単に勧告の水準に過ぎず強制力がないという限界があった。


今回の改正により、特許庁は行政調査の結果により是正命令と是正勧告を全て下すことが可能となった。特許庁長は提出された報告書を基に潜在的な不正競争行為または違反行為に対する調査を始めることができる。不正競争防止法第2条第1号(チ、ワ目は除く)による不正競争行為又は第3条、第3条の2第1項及び第2項による違反行為に関する事実を知った者は、この事実を特許庁長に報告することができる。不正競争行為や違反行為を確認するために必要な場合、他の方法としては、その行為有無を確認することが困難な場合には、関係公務員(以下、「調査官」という)が営業施設又は製造施設に入って関係資料や製品等を調査し、又は調査に必要な最少分量の製品を収去して検査することができる。また、現場調査を行う前に、特許庁長は、調査を受ける当事者に調査の目的、期間、場所、範囲、調査官の氏名及び職位、提出資料、調査拒否時の制裁事項及びその他の関連情報を含む文書を送付すべきである。調査を拒否する場合、特許庁は改正された不正競争防止法第20条により最高2,000万ウォン以下の過料を科すことができる。調査過程で調査官は不正競争防止法施行令に関する業務処理規定に基づき、資料などの提出または出席要請、諮問、陳述の聴取ができ、専門家の諮問が必要な場合には、関連分野の専門家、弁護士、弁理士、教授、特許庁審査官、審判官などで構成された諮問会議を開催して意見を聴取することも可能である。


特許庁の不正競争行為に対する行政調査の是正勧告及び是正命令の運営指針制定案によれば、調査の結果として不正競争防止法第2条第1号(チ、ワ目は除く)の不正競争行為や第3 条、第3条の2第1項又は第2項の違反行為が認められる場合、特許庁長は、次のような措置をとることができる。


(i) 標識等の除去や修正、手続履行命令(例えば、当事者に未同意のような手続的瑕疵を是正することを求めること)等の作為命令又は勧告;

(ii) 進行中の違反行為を中止させるか或いは今後の違反を禁止させるなどの不作為命令又は勧告;

(iii) 履行結果について周期的に報告書の提出を要求し、第3者又は特許庁の職員に是正措置に係る資料を検査するようにし、又は今後の履行点検を容易にするために一定期間資料を保管することを命ずるなどの補助的な命令又は勧告


これら例は例示的なもので特許庁長は再発を防止し、公正な取引秩序を保障するために必要に応じて追加命令または勧告を下すことができる。


改正された不正競争防止法第9条によると、特許庁長は、是正勧告、是正命令又は公表をするために必要であると認めると、当事者、利害関係人又は参考人の意見を聴かなければならない。改正された不正競争防止法施行令第3条により、特許庁長は、意見聴取予定日から少なくとも10日前に、是正勧告、是正命令及び公表の相手方、利害関係人、参考人又はその代理人に書面でその旨を通知して意見を陳述する機会を与えなければならない。通知を受けた者は、指定された日時に指定された場所に出席して意見を陳述するか書面で意見を提出することができる。


今回の改正法は、従来の是正勧告の限界を克服し行政救済策の効果を高め、持続的な技術盗用に対する迅速な措置が可能となるものと期待される。違反行為をした者が特許庁の是正命令を遵守しなければ、改正された不正競争防止法第20条に従って最高2,000万ウォン以下の過料が科されることができる。特許庁長は過料を科す前に、過料処分予告通知書を賦課対象者へ書留郵便で送付するか、直接発給して事前意見陳述の機会を与えるべきである。


特許庁長の命令は行政処分であるので、特許庁長の是正命令や過料通知に対し行政審判院に行政審判を提起して不服し、又は行政審判を経なくても行政法院に直接取消訴訟を提起することもできる。


さらに、改正された不正競争防止法には他人の営業秘密の毀損・滅失行為を処罰する新たな規定も導入された。


具体的には、改正された不正競争防止法第18条第3項により、不正な目的で他人の営業秘密を毀損、滅失または変更した者には10年以下の懲役または5億ウォン以下の罰金が科され得る。