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韓国大法院、課題解決原理が同一である場合、確認対象発明の付随的効果のみでは均等論の適用を否定できないと判断

  • June 30, 2026
  • 張奎哲弁理士

韓国大法院は、特許発明が先行技術において解決されていなかった技術課題を解決し、これと対比される確認対象発明も実質的に同一の技術思想に基づいて同一の技術課題を解決する場合、一般的に広く用いられる技術手段を採用したことに伴い確認対象発明に生じる付随的な効果のみでは、均等論の適用を否定するに十分な作用効果の相違があるといえないと判示した(大法院2026.1.29.宣告2022Hu10722判決)。

 

 

▶ 事件の背景

 

本件特許発明は、マスクに関するものであって、従来のマスクが有していた2つの問題点、すなわち、①紐を結合する構造と紐の長さを調節する構造とが別途構成され、マスクの構造が複雑であるという点、および②調節部材が着用者の耳の後ろに接触するためマスクの初期着用状態を安定的に維持することができないという点を解決するためのものである。

これらの課題を解決するため、本件第1項の発明は、とりわけ、マスク本体の中央カバー部の左右の上端部および下端部から一体的に延長形成された4つの密着孔部と、各側の上・下の密着孔部との間に形成される紐引き離隔空間とを有する構成を含んでいる。紐はこのように形成された密着孔を密着状態で通過した後、紐引き離隔空間において露出し、ユーザーは露出した部分を引っ張るだけで紐の長さを調節することができる。

特許権者が請求した積極的権利範囲確認審判において、確認対象発明は、特許発明と全体的な構造が実質的に同一であるものの、次の2つの点において相違することが把握された。すなわち、(i)特許発明の密着孔部は、マスク本体の後面に結合されるのに対し、確認対象発明の密着孔部は、マスク本体の前面(着用者の皮膚を向かない面)に結合され、(ii)特許発明の上・下の密着孔部は互いに完全に分離しているのに対し、確認対象発明の上・下の密着孔部は、一部の切込みにより紐引き離隔空間を形成する連結部を介して互いに連結されている。

 

 

▶ 均等論および本件の争点

 

韓国特許法上、確認対象発明が特許請求の範囲に記載された構成の一部において相違があるとしても、(i)特許発明と課題解決原理が同一であり、(ii)実質的に同一の作用効果を奏し、(iii)そのような変更が通常の技術者であれば容易に想到することができる程度のものであれば、(iv)特別の事情がない限り、その確認対象発明は依然として特許発明の均等範囲に属する。

本件の主たる争点は、確認対象発明が特許発明と「実質的に同一の作用効果」を奏するか否かであった。具体的には、確認対象発明の付加的な利点(向上された着用感、簡易化された製造工程、圧着部の形成)が、均等関係の成立を否定するに十分な作用効果の相違に該当するか否かが問題となった。 

 

 

▶ 特許法院の判決

 

特許法院は、確認対象発明が均等範囲に属さないと判断した。

特許法院はまず、特許発明の技術思想の核心、すなわち、マスク本体に密着孔部と紐引き離隔空間を形成して紐の結合構造と長さ調節構造とを統合する特徴が、使い捨て防塵マスクに関する韓国登録特許 第510164号(「先行発明」)に既に公知されていたか、あるいはこれと同様のものにすぎないとみた。また、その技術思想の核心自体が新しいものではない以上、作用効果については、上記技術思想全体を基準とするのではなく、相違ある構成要素の個別の機能や役割などを基準にして比較すべきであると判断した。

これを踏まえ、特許法院は、確認対象発明の相違する構成要素が特許発明に比して次の3つの付加的効果を有すると判断した。すなわち、(i)密着孔部が着用者の皮膚に接触しないため着用感が向上すること、(ii)上・下の密着孔部が連結された構成により、上・下の密着孔を一度に形成できるため製造工程が簡易化されること、および(iii)皮膚に接触することなく紐を圧着する機能を有する圧着部が、切込みの構成により自然に形成されることである。特許法院は、確認対象発明が特許発明の効果を超えてこのような付加的効果を有するため、両者が実質的に同一の作用効果を奏するものとは認められず、これらの相違によって均等関係が否定されると判示した。 

 

 

▶ 大法院の判決

 

大法院は、原審(特許法院)が均等侵害の要件に関する法理を誤解し、判決に影響を及ぼした誤りがあるとして、特許法院の判決を破棄し事件を差し戻した。

大法院は、作用効果が実質的に同一であるか否かは、先行技術において解決されていなかった技術課題として特許発明が解決した課題を、確認対象発明も解決しているか否かを中心に判断すべきであるという確立された法理を再確認した。すなわち、特許発明が先行技術において解決されていなかった課題を解決し、確認対象発明もその課題を同様に解決するならば、原則として確認対象発明の作用効果と特許発明の作用効果は実質的に同一であるとみるべきであるということである。大法院は、特許発明が解決した技術課題が先行技術においても既に解決されていた技術課題にすぎない場合に限り、相違する構成要素の個別の機能や役割などを比較して作用効果が実質的に同一であるか否かを判断すべきであると付け加えた。

この法理に基づき、大法院は、特許発明が解決した技術課題、すなわち、マスクの構造を簡素化し、初期の着用状態を安定的に維持できるようにするという課題が、提出されたいずれの先行技術によっても解決されていなかったと判断した。先行発明が端部仕上げ部に凹溝を形成し、その凹溝を通じて係止バンドを引き出して長さを調節する構成を開示しているものの、いずれの先行技術もマスクの構造を簡素化するために密着孔部をマスク本体から一体的に延長形成する構成を解決手段として提示してはいなかった。その上で、大法院は、特許発明に特有の解決手段を「中央カバー部の左右の上下端部から一体的に延長される密着孔部を形成し、これにより形成された密着孔に紐を密着状態で通過させて結合する構成」であると認定した。

大法院は、確認対象発明も上記のような同一の課題解決原理を具現していると判断した。確認対象発明も紐を結合する構造と紐の長さを調節する構造とを統合することで、マスクの構造を簡素化するとともに、初期の着用状態を安定的に維持できるようにしているためである。原審が認定した確認対象発明の上記3つの付加的効果に関して、大法院は、これを「一般的に広く用いられる技術手段を採用したことに伴う付随的な効果にすぎない」ものとみて、特許発明と同一の作用効果に加えて、そのような付随的効果が存在するという事情のみでは、均等論の適用を否定し得る実質的な作用効果の相違があるとみることはできないと結論付けた。 

 

 

▶ 本判決の意義

 

本判決は、韓国特許法上の均等論の要件のうち、「作用効果の実質的同一性」に関して有意義な判断基準を提示したものである。本判決は、確認対象発明が先行技術との関係において特許発明が解決したものと同一の技術課題を解決している場合には、たとえ確認対象発明が特許発明にはない付加的な効果を奏するとしても、両発明の作用効果は原則として互いに実質的に同一であるとみるべきであることを確認した。そのような付加的効果が、一般的に広く用いられる技術手段を採用したことに伴う付随的な効果であると適切に評価される限り、これをもって均等関係の成立を否定することはできない。