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大法院、侵害品の製造者の意図は、特許権の侵害判断の考慮対象でないと判示

  • March 31, 2020
  • 姜逸碩弁理士

大法院は、特許権の侵害を判断するにあたって、特許発明の特許請求の範囲に記載された各構成要素とその有機的な結合関係が対象製品にそのまま含まれているかどうかに基づいて判断すべきであることを再度確認しながら、請求項に記載された効果または機能を達成するための特定の構成要素がそのような効果または機能を達成しようとする意図をもって対象製品に採択されているわけで は ない 旨 の 被 告 の 抗弁 に 基 づ いて 非 侵 害 であ る と 判 断 し た 原 審 判決 を 破 棄 し た ( 大 法 院 2020.1.30.宣告 2017Da227516判決)。 



事件の背景 

 

本件特許は、LED室内天井照明装置に関するものであって、その請求項1においては、(1)内部空間部、インバータ安置部、インバータ安置部から延長されるベース、及び内部空間部と連通する多数の空気排出口が構成された本体(以下、「構成要素(1)」という)、(2)ベースの下面に結合する、LEDが搭載されたLEDモジュール(以下、「構成要素(2)」という)、(3)インバータ安置部に位置し、LEDに連結されてLEDへ電源を供給するインバータ(以下、「構成要素(3)」という)、(4)本体に結合され、LEDモジュールを内部に包容する拡散カバー(以下、「構成要素(4)」という)、及び(5)インバータを内部に包容し、本体に結合される安置カバーが構成され(以下、「構成要素(5)」という)、(6)拡散カバーの内部空気が本体の内部空間部に流入され、本体の空気排出口を通じて排出されると共に(以下、「構成要素(6)」という)、(7)拡散カバーとベースとの間の隙間を通じて外部空気が拡散カバーの内部へ流入されてLEDモジュールと熱交換することでLEDモジュールが冷却されること(以下、「構成要素(7)」という)を特徴とする空気循環冷却型LED照明装置を請求している。

 

特許権者は、競合他社である被告を相手取って地方法院へ特許権侵害差止訴訟を提起したものの、侵害訴訟の第1審においては、被告製品が本件特許の特許請求の範囲に属さないとの理由で原告敗訴の判決が下され、特許権者はこれに不服して特許法院へ控訴した。



 特許法院の判決 

 

控訴審において、特許法院は、被告製品が本件特許発明の構成要素(1)〜(5)をそのまま有していると判断し、これに対しては両当事者間に争いがなかった。 

 

一方、構成要素(6)及び(7)に対して、特許法院はこれらの構成要素がたとえ請求項に記載されているものの、LEDモジュールの冷却という特定の目的のための役割を果たすものと解釈した。特許法院はこのような解釈に基づいて、被告製品におけるLEDモジュールがそれ自体の重さにより下に垂れることでLEDモジュールとベースとの間に自然に微細空間が形成され、拡散カバーのフックがベースの貫通孔に挿入されて拡散カバーとベースが結合されるとき、完全に密閉されず、少しでも離隔されて隙間が発生することが認められるが、このような微細空間と隙間がLEDモジュールの冷却効果を得るための特別な目的をもって意図的に形成されたものではなく、LED照明装置を組み立てることにより、自然に形成されたものに過ぎないので、前記微細空間及び前記隙間がそれぞれ構成要素(6)及び(7)に該当しないと判断した。 

 

 

したがって、特許法院は、被告製品が構成要素(6)及び(7)を有していないため、本件特許の保護範囲に属さないと見なして、原告敗訴を宣告した第1審の判決を維持した。特許権者は、これに不服して大法院へ上告した。 



 大法院の判決 

 

上告審において、大法院は、被告製品にLEDモジュールとベースとの間に微細空間が存在し、本体に空気排出口が備えられており、拡散カバーとベースが離隔され、その部分に隙間が存在し、このような構成要素間の有機的な結合関係により、外部空気が拡散カバーとベースとの間の隙間を通じて拡散カバーの内部に入り込み、拡散カバー内の内部空気がLEDモジュールとベースとの間の微細空間を通じて本体の内部空間部に移動しているため本体の空気排出口を通じて排出されることにより、LEDモジュールの冷却効果を達成することが認められると判断した。 

  

さらに、大法院は、被告製品におけるLEDモジュールとベースとの間の微細空間と、拡散カバーとベースとの間の隙間は被告が特別な意図をもって形成したものでないとの理由で、構成要素(6)及び(7)に該当しないと判断した原審判決は特許請求の範囲の解釈及び特許権侵害に関する法理を誤解したものと判示しながら、原審を破棄して事件を特許法院に差し戻した。

 


 本判決の意義 

 

大法院は、特許権の侵害判断において構成要素完備の原則が基になることを再度確認しながら、特定の構成要素によって達成される効果または結果が請求項に記載されている場合、特許権の侵害を判断するにあたって、該構成要素によってそのような効果または結果が実際に表されるかどうかのみを検討することで十分であり、そのような効果または結果を達成しようとする意図をもって該構成要素を採用したかまで考慮するわけではないと述べた。