改正不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律(以下、「改正法」という。)が2021年12月7日公布された。改正法は、(1)データを不正に使用する行為、(2)有名人の肖像、氏名など当該有名人を識別できる標識を権限なく無断で使用する行為を新たな不正競争行為として導入した。改正法において、データの不正使用行為に関する規定は2022年4月20日から施行され、有名人の標識を無断で使用する行為に関する規定は2022年6月8日から施行される予定である。
▶ データの不正使用に対する保護
第4次産業革命、人工知能(AI)技術の開発及び実装に向けて、データの重要性が高まっており、ビックデータを活用して経済的付加価値を創出しているが、データの保護に関する法的基盤が不十分なため、データの円滑な利用や流通が阻害している。
そこで、改正法は、「データ産業の振興及び利用促進に関する基本法」第2条第1号によるデータのうち、業として特定の者又は特定多数に提供されるものとして、電子的方法で相当の量が蓄積·管理されており、秘密として管理されていない技術上又は営業上の情報」をこの法律で保護するデータとして定義し、これらのデータを不正に使用する行為を不正競争行為の類型として新設しつつ、具体的な禁止行為として次の4つの類型を挙げている。
1) アクセス権限のない者が窃取·欺瞞·不正接続又はその他の不正の手段によりデータを取得し、若しくはその取得したデータを使用・公開する行為
2) データの保有者との契約関係等によってデータにアクセス権限を持つ者が不正の利益を得るか、若しくはデータの保有者に損害を加える目的で当該データを使用・公開し、又は第3者に提供する行為
3) 1)又は2)が介在したことを知ってデータを取得し、又はその取得したデータを使用·公開する行為
4 )正当な権限なくデータの保護のために適用した技術的保護措置を回避·除去又は変更することを主たる目的とする技術・サービス・装置又はその装置の部品を提供·輸入·輸出·製造·譲渡·貸与又は転送するか、或いはそれを譲渡·貸与するために展示する行為
即ち、改正法で保護されるデータは「相当の量が蓄積·管理」されるべきであるので、ビックデータのような相当の規模のデータが保護範囲に含まれ、且つ、「業として特定の者又は特定多数に提供されるものとして、…秘密として管理されていない」ことから営業秘密に該当しないデータが保護される。
改正法によると、データの不正使用行為によって利益を侵害された者(例えば、データの保有者)は、データの不正使用行為者に対し、データの不正使用行為の差止請求(第4条)及びその不正使用行為によって生じた損害に対する賠償請求(第5条)等の民事上の措置を取ることができる。
なお、前述の「技術的保護措置の無力化」類型のデータ不正使用行為に対しては、3年以下の懲役又は3千万ウォン(約USD25,000)以下の罰金に処される。
▶ 有名人の標識の無断使用に対する保護
BTS(音楽)、イカゲーム(テレビシリーズ)、寄生虫(映画)などの様々なプラットフォームで韓国の大衆文化が世界的な成功を収め、韓国の大衆文化における有名人の肖像·氏名などを無断で使用する製品やサービスが増加している。しかしながら、現行の韓国法では、有名人の人的識別標識の無断使用行為に対する明示的な規定がないため、有名人の財産的損害や、無断使用によって消費者に生じた被害を適切に保護することに限界があった。
このような状況を踏まえ、改正法は、「国内に広く認識され、経済的価値を持つ他人の氏名、肖像、音声、署名など、その他人を識別できる標識を公正な商取引慣行や競争秩序に反する方法で、自らの営業のために無断で使用することにより他人の経済的利益を侵害する行為」を不正競争行為として明文化し、いわゆる有名人のパブリシティ権を保護している。
改正法によると、有名人の標識を無断で使用する行為によって経済的な利益が侵害された場合、無断使用行為に対する差止請求、損害賠償などを裁判所に請求して被害の救済を受けることができる。ただし、有名人の標識を無断で使用する行為は刑事処罰対象から除外される。