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審判手続上不当行為防止及び証拠調査奨励のためのIP審判費用負担制度の改善

  • June 30, 2022
  • 朴賢子弁理士 / 朴垠珍弁理士

当事者系審判の場合、敗訴者が審判費用を負担することが原則であるが、勝訴者が本人の利益のための審理遅延を誘発した場合などの例外的な場合には、勝訴者も審判費用の一部又は全部を負担する(民事訴訟法98条ないし100条準用)。従って、当事者系審判に該当する特許無効審判、存続期間更新登録無効審判、権利範囲確認審判、訂正無効審判における審判費用の負担は、諸般の事項を考慮して審決をもって定める。

 

この際、審判費用に含まれる項目、費用の範囲などの具体的な事項は「産業財産権審判費用額決定に関する告示」で規定しているが、当該告示は、審判中の不当な行為や意図的な審理遅延などが生じた場合の取扱いについて別途で扱っていないのみならず、審判費用額のうち代理人報酬を審判請求料を超えない範囲に限定しているので、実効性が低いとの批判があった。

 

そこで韓国特許庁は、今年の1月と6月の2回にわたる「産業財産権審判費用額決定に関する告示」の改正を通じて、当事者系審判のうち不当行為者の費用負担の上限を増やし、証拠調査に係る費用を審判費用に含ませるなど、かつての費用負担制度の問題点を改善した。

 

2022年1月25日付で施行された改正内容によると、下記イ及びロの場合における代理人報酬の上限が、既存の審判請求料から訴訟目的の値が1億ウォンの時の弁護士報酬の上限(740万ウォン)に上向き調整される。

 

イ.一 当事者が故意·重過失で証拠などを十分に提出せず、特許法院に遅れて提出した後に勝訴した場合

ロ.偽 り又はその他の不正な行為で取得した権利で審決を受けたり、審理中に偽り又はその他の不正な行為をした事実が発見された場合

 

例えば、無効審判請求人が故意·重過失で証拠を十分に提出せず、棄却審決を受けたが、その後特許法院に遅れて追加資料を提出することにより勝訴をした場合、このような不公正行為をした審判請求人、即ち、勝訴者は、増えた限度内で敗訴者の審判費用を負担することになる。また、審判中に一方当事者の不正行為が追って特許法院で明らかになった場合、不正行為者が負担する相手方の審判費用にも増えた上限が適用される。

 

さらに、2022年6月1日から施行されている改正告示によると、審判費用に証拠調査費用が含まれるので、審判中に当事者の申請によって証拠調査を実施した場合、鑑定、通訳、翻訳、現場検証はもちろん、イメージ分析、デジタルフォレンジックなどのデジタル証拠調査費用も上限額(600万ウォン)の範囲内で相手方に実費請求ができるようになった。

 

かかる改正は、当事者系審判において当事者の誠実な審判の遂行を誘導し、紛争初期の活発な証拠調査及び提出を促進する効果をもたらすものと期待される。