韓国における特許取消申請制度は、2017年3月1日から施行されて運用されている。同制度は特許無効審判と比較して、下記表のような相違を有する。
特許取消申請 | 特許無効審判 | |
請求人 | 何人でも可能 | 利害関係人 |
請求(申請) | 特許登録日 ~特許登録公告日から6ヵ月 | 特許登録後いつでも可能 |
無効(取消) | (i)刊行された文献に基づいた新規性/進歩性欠如、(ii)先願主義、拡大された先願主義違反 | 拒絶理由と同一(但し、発明の単一性及び請求項の記載方式違反は除外) |
不服 | 特許取消決定に対しては不服(出訴)可能;特許維持決定に対しては不服不可 | 不服(出訴)可能 |
本稿では、特許取消申請制度の施行以降5年が経過し、制度の運用が安定化した現時点において、その間の特許取消申請に係る統計及び傾向について紹介する。本統計は、制度施行以後に申請された件のうち、2021年末までに審理が終結した件を対象として作成した。
▶ 特許取消申請の件数
<年度別申請件数>
<特許権者の国籍別申請件数>
最近5年間、総733件の特許取消申請が請求され(年平均約 150 件)、特許 権者 の 国籍別で は韓国が 55% 、 外国が45%であった。
<国際特許分類(IPC)別の申請件数>
一方、特許取消申請の対象となった特許の技術分野としては、国際特許分類(IPC)を基準に、化学/冶金(C)が最も多く(30%)、次いで電子(H)が続いた(23%)。韓国産業の特性上、電子材料、素材部分の競争が激しく、この技術分野における特許に対する取消申請が主となっていると把握される。
▶ 処理結果
<年度別処理現況>
最近5年間の特許取消申請の処理件数は総599件であり、そのうち181件に対して特許(一部)取消決定(認容決定)が下されたところ、特許(一部)取消率は、約30.4%の値を示した。これは 、 特 許 無 効 審 判 に お け る 無 効 率 (2021 年 基 準52.3%)よりは低い水準であることがわかる。ここで、取消率(認容率)は、「認容件数/(認容件数+棄却件数+却下件数+取下げ件数)」と算定した。
<処理結果の詳細>
具体的な審理結果を検討すると、取下げ、却下により終了した件を除いた、実質的な審理が行われた事件において、取消理由が発せられないまま、棄却(特許維持)された割合が30%、訂正を通じて特許が維持された割合が34%、訂正をしたにもかかわらず(一部)認容、つまり、特許が(一部)取り消された割合が17%、訂正をせず、特許が(一部)取り消された割合が15%であった。一方、訂正をしないまま、特許がそのまま維持される割合はわずか4%に過ぎなかった。これを通じて、韓国の特許取消申請において、ひとまず取消理由が発せられる場合、訂正なしに特許をそのまま維持することは非常に困難であることが分かる。
▶ 訴訟統計
2021年まで処理された事件において、(一部)認容された181件のうち、特許法院に出訴した事件は44件であり、出訴率は約24%であった。一方、特許法院で認容判決(特許有効)が下された割合は、約39%であった(総判決件数33件のうち13件)。