最近、韓国大法院は、審判請求人が自分の発明が特許の権利範囲に属しないとの確認を求める消極的権利範囲確認審判において審判対象は、審判請求人が現実的に実施する技術と異なるとしても、審判請求人が特定した確認対象発明に限定すべき旨判決を下した(大法院2023年1月12日宣告2020Hu11813判決)。
▶ 特許発明
審判請求人は、2019年5月17日付で特許審判院に特許権者を相手取って請求人が審判対象として定義し提示した確認対象発明が本件特許の請求項1の権利範囲に属しない旨確認を求める消極的権利範囲確認審判を請求した。
本件特許の請求項1に記載の発明は、骨盤底筋強化練習用デバイスに関するものであって、ユーザの着座を可能にする着座手段が設けられているデバイスボディと、ユーザの骨盤底筋の身体陥没部に接触することなく、身体陥没部に対応する位置周囲に囲んで配列される2つ以上の低周波パルス印加用電極パッドとを備えることを特徴とする。電極パッドが身体陥没部に接触しない構成は、本件特許の出願審査過程で先行文献に基づいた拒絶理由を解消するために請求項1に追加されたものである。
▶ 審判請求人により提示された確認対象発明
消極的権利範囲確認審判で審判請求人が定義し提示した確認対象発明は、骨盤底筋を強化することにより尿失禁を治療するデバイスに関するものであって、ユーザの着座を可能にする着座手段が設けられているデバイスボディと、前記デバイスボディの中央に配置されてユーザの骨盤底筋の身体陥没部と接触できる楕円形の突出部に形成された第一及び第二電極と、を含む。
▶ 特許審判院の審決
審判手続きにおいて審判請求人は、自分のデバイスが本件特許の出願審査過程で追加された限定事項である電極パッドの非接触構成を含まないので、本件特許の請求項1の権利範囲に属しないことを主張した。一方、特許権者は、審判請求人が実際に販売するデバイスには突出部がなく、よって、審判請求は確認の利益がないため却下されるべきと主張した。
これに対して、審判院は、突出部は本件特許の権利範囲から意識的に除外されたものであると述べながら、審判請求人が定義し提示したデバイスは本件特許の請求項1の権利範囲に属しない旨審決を下した。
▶ 特許法院の判決
特許権者が提起した控訴審において特許法院は、審判対象として提出された確認対象発明が本件特許の請求項1の権利範囲に属しない旨特許審判院の判断を支持した。
▶ 大法院の判決
上告審にて大法院は、消極的権利範囲確認審判における審判対象は、審判請求人が現実的に実施する技術が審判の対象となった具体的な発明と異なるとしても、審判請求人が定義し提示した特定の発明に限定されるべきであることを明らかにした(大法院2010年8月19日宣告2007Hu2735判決 、 大法院 2019年9月9日宣告2019Hu10081判決等参照)。
▶ 本判決の影響
本判決は、侵害者が合法性を装って利益を得るために時々利用する消極的権利範囲確認審判の限界と陥穽を示している。