最近、韓国特許法院は、外国臨床試験の結果が医薬品の許可を受けるために必要であったものであれば、外国で実施された臨床試験期間について特許権の存続期間の延長が認められる旨判決を下した (特許法院 2023.7.5. 宣告2022Heo3533、3557(併合)判決;上告審係属中)。
▶ 存続期間延長登録の延長期間の算定
特許法第89条によれば、特許発明を実施するために許可を受けなければならない医薬品発明の場合、その許可のために必要な有効性・安全性等の試験により特許発明を実施することができなかった期間に対して5年の期間まで存続期間が延長されることができる。
前記延長期間について、韓国特許庁の告示においては、「許可を受けるために食品医薬品安全処長の承認を得て実施した臨床試験期間」と「食品医薬品安全処で所要された許可申請関連書類の検討期間」を合算した期間から「特許権者の責めに帰する事由により所要された期間」を除いて算定すると規定されている。
このように、特許庁の告示は存続期間延長の対象となる臨床試験を食品医薬品安全処長の承認を得て実施した臨床試験に限定しているため、韓国特許実務では、通常、外国で実施された臨床試験期間は延長期間に含まれないものと見受けられてきた。
▶ 事件の背景
本事件は、糖尿病治療剤であるガルバス(Galvus)錠に関する特許の存続期間延長登録の無効訴訟である。ガルバス錠の品目許可過程のうち、本事件で問題となった期間は以下の通りである。
日付 | 経過 | |
2005.1.15. | 韓国での臨床試験の開始 | |
2005.6.29. | 外国での臨床試験の開始 | |
2005.8.11. | 本件特許の設定登録 | |
2006.1.6. | 韓国での臨床試験の終了 | |
2006.5.19. | 輸入品目許可のための原料医薬品情報(DMF)審査申告書の提出 | |
2006.7.14. | 外国での臨床試験の終了 |
本件特許に対する延長登録は、本件特許の設定登録後から特許権者が医薬品の許可のために食品医薬品安全処にDMF審査申告書を提出するまでの期間を全て含めて認定された。ところが、この期間のうち、韓国での臨床試験終了の翌日からDMF審査資料の提出日前日までの期間(「対象期間」)は、特許権者の責めに帰する事由により所要された期間であるため、これに対して認められた存続期間延長登録は無効となるべき旨の存続期間延長登録の無効審判が韓国のジェネリック製薬会社によって請求された。また、ジェネリック製薬会社は、対象期間中に実施されたものが国内臨床試験ではなく、外国臨床試験である以上、同期間は延長期間に含まれてはならないと主張した。
特許審判院は、対象期間が特許権者の責めに帰する事由により所要された期間と見受けられないとの理由で却下審決を下した。これに不服し、ジェネリック製薬会社は特許法院に控訴した。
▶ 特許法院の判決
特許法院は、薬事法上、品目許可申請書にDMF審査申告書を添付して提出するよう規定されているだけであって、国内臨床試験終了日以前に提出しなければならないという規定はないので、特許権者のDMF審査申告書の提出時期が法令に違反すると見受けられないと述べながら、対象期間は特許権者の責めに帰する事由により所要された期間に該当しないため、特許権の存続期間延長の延長期間に含まれると判断した。
特に、特許法院は、薬事法で医薬品の輸入品目許可のために安全性及び有効性に関する試験成績書を提出するようにしているだけであって、そのための臨床試験を国内臨床試験に限定せず、輸入品目許可を申請するためには、許可された外国政府に提出された資料として外国臨床試験資料の提出が必要である点に注目した。
そこで、特許法院は、輸入品目許可のために必要な外国臨床試験を国内臨床試験と異に扱うべき合理的理由が見付からないとしながら、特許法第89条に規定された許可のために必要な有効性・安全性試験には外国臨床試験が含まれると見ることが妥当であると判示した。
▶ 本判決の意義
本判決では、食品医薬品安全処長の承認を得ずに実施された外国臨床試験であっても、その臨床試験の結果が医薬品の輸入品目許可を受けるのに必要であったものである場合、外国臨床試験に所要された期間を特許権の存続期間延長の対象として認めた点に意義がある。今後の大法院の上告審判決に注目が集まっている。