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商標共存同意制度の導入に関する商標法の改正

  • June 28, 2024
  • 李姃垣弁理士 / 趙埈瑩弁理士

2024年5月1日から施行されている改正商標法では、先登録(先願)商標の権利者が同一・類似する後願商標の登録に同意する場合、後願商標が登録可能となるようにする商標共存同意制度が導入された。これに伴い、譲渡や移転等、迂回的な方法で商標を使用する出願人の不便さが減り、商標権に関する紛争を未然に防ぐ効果が期待できる。 


商標共存同意制度の主な内容は次の通りである。 

 

 

 

▶ 審査官が拒絶不可の共存同意制度

 

 

後願商標に対して適法な共存同意書が提出された場合、審査官は共存に同意した先登録(先願)商標に基づいて後願商標を拒絶することができない。 

 

共存同意により解消できる拒絶理由は、先登録(先願)商標に同一・類似するという商標法第34条第1項第7号及び第35条第1項に限られる。ただし、共存同意があっても、先登録(先願)商標と標章が同一で、かつ指定商品が同一の後願商標は登録不可能である。また、未登録の先使用商標の認識度に基づく拒絶理由は共存同意書の提出で解消することはできない。 

 

一方、改正法の施行日前に出願された商標であっても、施行日の時点で出願係属中であれば共存同意書の提出は可能である。 

 

 

 

▶ 共存同意内容の具体性 

 

 

先登録(先願)商標が多数の場合、すべての権利者から共存同意書を得なければ拒絶理由を解消することはできず、後願商標の一部の商品に対してのみ拒絶理由が存在する場合は、一部の商品に限定した共存同意も可能である。 

 

したがって、共存同意書には同意の対象となる各々の商標と商品の範囲を具体的かつ明確に示さなければならない。「今後出願される出願商標一切に対する同意」といった包括的な同意書、又は、期限・地域制限、法律効果の一部排除等の条件がある共存同意書は認められない。 

 

 

 

▶ 共存同意による登録商標の公示

 

 

共存同意により後願商標が登録される場合、後願商標の登録原簿及び共存に同意した先登録(先願)商標の登録原簿の両方に共存同意に関する登録商標であることが表記され、関連登録番号も共に表記される。 

 

 

 

▶ 商標共存に同意する際の注意事項

 

 

共存同意を得て登録された商標は、共存同意を得ずに登録された一般的な登録商標と同じ地位を有する。よって、同意者が後に出願する同一・類似する商標に対して、共存同意を得て登録された商標が先登録商標として引用される可能性がある。  

 

共存同意を撤回するには、後願商標の出願人の同意を得なければならず、登録決定後は共存同意の撤回の主張が不可能である。 

 

また、共存同意で登録された後願商標及び共存に同意した先登録(先願)商標が不正競争を目的に自己の登録商標を使用することで需要者に商品の品質を誤認させたか、又は他人の業務と関連のある商品との混同を招いた場合は、その商標登録が取り消されることがある。